歯周病と診断する歯科医、歯槽膿漏と診断する歯科、正しいのはどちらの診断ですか?
西早稲田の歯医者さん、西早稲田駅前歯科・小児歯科・矯正歯科です。
今回のテーマは「歯周病の進行度と病名」です。
ある歯科医から歯周病と診断された人が、別の歯科医から歯槽膿漏と診断されることがあります。
診断の結果の病名が異なる以上、当然患者さんはどちらの診断が正しいのか不安に思うでしょうが、
実はこのようなケースは稀ではなく、またどちらの歯科医の診断も間違っていないのです。
これは一体どういうことなのか?…ここでは、歯周病の病名の呼び方についてのお話をしていきます。
歯周病の進行度と病名
歯周病は進行する病気ですが、その症状は進行度によって3段階に分けられています。
進行度は初期段階、中期段階、重度段階の3段階で、それぞれ起こる症状は次のとおりです。
・初期段階の歯周病 :歯肉に炎症が起こり、口臭や歯肉からの出血が見られる
・中期段階の歯周病 :初期段階の歯周病の症状に加え、歯槽骨が破壊される
・重度段階の歯周病 :初期段階、中期段階の歯周病の症状に加え、歯がグラグラする
次に、歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏で起こる症状についてまとめてみます。
・歯肉炎 :歯肉に炎症が起こり、口臭や歯肉からの出血が見られる
・歯周炎 :初期段階の歯周病の症状に加え、歯槽骨が破壊される
・歯槽膿漏 :初期段階、中期段階の歯周病の症状に加え、歯がグラグラする
…いかがですか?これらを見比べると分かるとおり、初期段階の歯周病と歯肉炎、
中期段階の歯周病と歯周炎、重度段階の歯周病と歯槽膿漏では起こる症状が全く同じです。
ですから、次のとおりにまとめることができます。
・初期段階の歯周病=歯肉炎
・中期段階の歯周病=歯周炎
・重度段階の歯周病=歯槽膿漏
…つまり、歯槽膿漏は重度段階の歯周病、重度段階の歯周病は歯槽膿漏を意味しています。
このため、歯周病と告げるのも歯槽膿漏と告げるのも診断として間違いではなく、
それぞれの歯科医が異なった呼び方をしているだけなのです。
歯科医によって病名の呼び方が異なるのはなぜか
これについては実際にその歯科医に確認しないことには答えは分かりませんが、
想像として次の2つの理由が考えられます。
口癖
元々は歯周病ではなく歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏と呼んでおり、
それが最近では全てひっくるめて歯周病と呼ぶようになりました。
ですから、経験の長い歯科医は歯周病ではなく、以前の口癖で歯肉炎や歯周炎や歯槽膿漏と呼ぶのです。
危機感を持ってもらうため
あくまでイメージですが、歯周病と呼ぶよりも以前の病名で呼んだ方が病気に危機感を持てます。
特に歯槽膿漏に至っては、「歯槽から膿みが漏れる」という怖い表現になっていますからね。
歯周病は虫歯に比べて軽視されがちであり、そのため危機感を持ってもらうために昔の呼び名を使うのです。
…特に重要なのは「危機感を持ってもらうため」のケースです。
歯周病は静かなる病気と呼ばれ、それは大きな自覚症状がないからです。
しかし歯周病は進行すると歯を失う怖い病気です。
このため、例え歯槽膿漏などと呼ばなくても、歯周病と診断された時点で危機感を持ってください。
歯周病の怖さ
上記でお話したとおり、歯周病は怖い病気です。
虫歯の痛みのように大きな辛い自覚症状がないため、歯周病は怖くないと思う人もいるでしょう。
しかし、歯周病になると次のような症状が起こります。
口臭がする
細菌の繁殖、歯肉から出た膿み、歯肉からの出血によって口臭がするようになります。
口臭の原因は様々ですが、その中でも歯周病による口臭は特にきつく、
会話する時に相手に与えてしまうほどです。
知覚過敏が起こる
歯周病が進行すると、歯肉が退縮することで歯肉の高さが下がります。
そして、歯肉の高さが下がることで歯の根が露出しますが、
この歯の根にはエナメル質がなく、そのため刺激を受けると知覚過敏が起こります。
歯を失う
歯周病の進行によって歯槽骨が溶かされると、歯は支えを失うことになります。
支えを失った歯は不安定になりますから、グラつくようになって最終的には抜け落ちてしまいます。
また、ここまで歯周病が進行すると治療しても歯を残せず、抜歯が必要になる可能性もあります。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、歯周病の進行度と病名についてまとめます。
1. 歯周病の進行度と病名 :初期の歯周病は歯肉炎、中期の歯周病は歯周炎、重度の歯周病は歯槽膿漏
2. 歯科医によって病名の呼び方が異なるのはなぜか :怖い病名を使って危機感を持ってもらうため
3. 歯周病の怖さ :口臭がする、知覚過敏が起こる、歯を失う
これら3つのことから、歯周病の進行と病名について分かります。
紛らわしく思うかもしれませんが、歯周病と呼ぶようになったのは近年のことです。
以前は歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏と呼ばれており、
それが近年、全てひっくるめて歯周病と呼ぶようになったのです。
ですから仮に歯槽膿漏と診断された場合、それは重度の歯周病であると判断してください。