歯の神経は残したほうがいいですか?

歯に痛みが出て歯医者に行ったら「虫歯がかなり進行しているので、神経を取らないといけないかもしれません」と言われたことはありませんか?
または「虫歯が神経にまで達しているので、神経を取る治療をしましょう」と言われた方もいるかと思います。

そもそも「歯の神経」とは何か、どんな役割があるのか、神経は取ってもいいものなのか、わからない方もいらっしゃるかと思いますので、一つずつ解説していきます。

歯の神経とは?

歯は外側から骨よりもかたいエナメル質、柔らかい組織の象牙質、一番内側にある歯髄の3層構造になっていて、神経は歯髄(しずい)の中に血管と一緒にあります。
歯髄と言っても分かりにくいため、歯医者では「神経」とお伝えすることが多いかと思います。
すなわち、「神経を取る」や「神経にまで達している」と言われた時は「歯髄を取る」「歯髄にまで達している」ということになります。

歯の神経の役割とは?

歯髄には、神経と血管が張り巡らされていて、大きく分けて2つの役割があります。

1つ目は、神経があるので歯の異常を感じられることです。
「冷たいものがしみる」「歯がズキズキと痛む」「噛むと痛い」などの症状を感じるのは神経があるからです。
これらの症状が辛く、歯医者に行かれる方も多いのではないでしょうか?

ちなみに、虫歯で歯が痛む場合は、虫歯が象牙質まで進行している可能性があります。
なぜなら、エナメル質だけが虫歯になっていても歯髄まで距離があるため、しみるや痛いといった症状は全く出ません。
象牙質まで進んだ虫歯は、だんだんと歯髄に近づいているので、しみてきたり痛みを感じやすくなります。
つまり虫歯が大きく、状態が悪くなってきているということです。

2つ目の役割は、血液が流れているので歯に栄養分を届けることです。
栄養分には、カルシウムやリンなどのミネラル成分が含まれていて、血管を通して象牙質に栄養分を届け、歯の内側から丈夫で虫歯になりにくい歯にしていきます。

歯の神経はどんな時に取るの?

虫歯を削ってむやみに神経を取る歯科医師はいないでしょう。
とくに最近の治療は、なるべく歯を削らずに最小限の治療にとどめることが主流です。
では、歯の神経を取る場合はどんな時でしょうか?

歯髄まで達している虫歯

1つ目は、虫歯菌が歯髄まで達していて、歯髄が菌で汚染されている場合です。
この場合は歯髄をすべて取り除き、きれいにする必要があります。

なぜなら、汚染されている部分を残してしまうと、歯の根の先端に膿が溜まってしまうからです。そうすると疲れた時や体調を崩した時に違和感や痛みを感じたり、突然痛みが出てしまう、歯肉にニキビのようなプツっとしたデキモノができたりします。

状態がひどいと、歯を支えている骨が膿によってどんどん溶かされ隣の歯の根にまで影響を及ぼし、気づかないうちに隣の歯の神経が根の先端から汚染され、神経反応が無くなってしまうこともあります。

日常生活に影響を及ぼす強い痛みがある

2つ目は、痛みがあまりにも強くてどうしようもない場合です。
この場合は、痛みを感じる神経を取らないと辛い症状が続いてしまうので、いたしかたなく神経を取ります。そうすると、冷たいものがしみる、ズキズキと痛むという症状は無くなります。

強い衝撃などで神経がダメージを受けている

3つ目は、転んだりして前歯を強くぶつけてしまった影響で、のちのち神経を取る場合です。

これは、強い衝撃を受けたことにより神経がダメージを受け、年単位で徐々に弱っていき神経反応がなくなり、腐敗していきます。
虫歯菌による感染ではないので、気づかないうちに神経反応が無くなってしまい、歯科医院に行ったときに診断されて初めて気づく方も多いです。

または、前歯の1本だけ黒ずんでいる気がする、変色していて気になるというパターンも多いです。
この場合、歯の根の先端に膿が溜まっていることがあるので、治療回数が多くかかることがあります。

ほかにも神経を取る理由はありますが、この3つが要因のことが多いでしょう。

神経を取った歯はどうなるの?

神経を取った歯は痛みを感じなくなり、歯に栄養が行き渡らなくなります。
強い痛みを感じて辛い思いをしていた方にとっては、痛みを感じなくなることはメリットに思うかもしれません。
しかし痛みを感じないということは、再び虫歯になった時に気付くことができないということです。
そのため、虫歯がかなり進行していても気が付かずに治療が遅れ、抜歯しないと治せないほど進行していることもあります。

また、神経がない歯は血液・栄養が行き渡らないので、歯の組織の新陳代謝がなくなり、枯れ木のような状態になります。そうすると、歯の色がだんだんと黒ずんできて、見た目にも影響が出てしまいます。

それだけでなく、神経がある健康的な歯に比べると、歯の寿命が約10年短くなると言われています。それは歯が脆くなり、欠けたり割れやすくなるからです。
割れ方によっては歯を残すことができず、抜歯になる場合もあります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は歯の神経について解説しました。

歯の神経とはどういったもので、どんな役割があって、どんな場合だと取らなければいけないのか、取った場合はどうなるのか、お分かりいただけたでしょうか?

「歯の神経は残したほうがいいですか?」の問いに対しての答えは「残せるなら残したほうがいい!」と言えるでしょう。

とくに最近は、虫歯が大きくても歯の神経を取らない治療法を取り入れている歯科医院も多くなってきました。それは、「歯の神経を保存・保護できる薬剤」が進歩してきて、エビデンスが確実となってきているからです。
以前だったら神経を取る一択だったものが残せるようになってきており、医療は日々進歩しています。しかし、いくら医療が進歩しようとも、神経を取るしかないような虫歯を作らないことが大切です。

大きな虫歯を作らないためにも、気になる症状が出たら放置せず、歯科医院に行ってお口の中を見てもらってください。
また、日頃の歯磨きはもちろん、定期検診やクリーニングを受けて、ご自身では取り切れない汚れをとり、虫歯になりにくいお口の環境を維持していくことも大切です。