歯を削らないで虫歯治療はできますか?
みなさんは虫歯治療といえば、キーンと音がするドリル等の器械を使って歯を削る、麻酔をする、痛い、怖いなどの印象をお持ちではないでしょうか?
これらのせいで歯医者が苦手という方も多いと思います。
歯を削らずに虫歯治療ができたらいいのに・・・・・・。そう考えたことはありませんか?
そもそも虫歯はどうしてできるの?
虫歯とは、ストレプトコッカス・ミュータンス菌という虫歯菌によって感染した感染症の一種です。
ミュータンス菌が歯に付着して酸を出すことによって歯が溶けていくこと、これを「脱灰」といいます。
脱灰したところは表面がザラザラしていて、汚れや菌がさらに付着して菌が増殖しやすく、どんどん歯が溶ける、というのが虫歯によって穴が空く過程です。
この過程を繰り返し、徐々に歯の中心部にある神経に近づいていきます。
そうするとズキズキと痛んでくる、というのが虫歯によって歯が痛む原因です。
虫歯になる原因は他にもあり、歯の質や食べた物、お口の中の菌の数、唾液、菌が付着している時間、ご自身の免疫力など様々な要因が絡んで虫歯になります。
歯を削る従来の虫歯治療とは
虫歯菌に侵された部分を、取り残しがないようにすべてドリル等で削り取っていくのが従来の一般的な虫歯治療です。
そして削り取った部分、穴が空いている部分を補うために詰め物、被せ物をしていきます。
神経まで虫歯菌に侵されている場合には、神経を取り除き根の中を綺麗にする治療を何回か行い、薬を詰めて土台を立て、被せ物をしていきます。そうすると通院回数は増え、費用もかさんでいきます。
これらの治療は麻酔が必要で、痛みが出たり歯を多く削ることになります。
歯は骨とは違い一度削ったら元に戻ることはありません。また、削った歯は再度痛みが出るリスクが高くなります。
どうして削った歯は痛みが出たり再度虫歯になるの?
治療後に虫歯が再発してしまう理由は、削った後に入れる詰め物、被せ物自体に殺菌力が一切ないからです。
虫歯菌は基本的に酸素が少ない場所を好み繁殖します。
口の中の酸素が少ない場所は詰め物や被せ物の下のようなところなので、絶好の繁殖ポイントとなります。
また、削った歯に痛みが再発する理由は、削った刺激により神経がダメージを受けてしまうからです。そのため、あとから痛みが出ることもあります。しばらくして痛みが落ち着けばいいのですが、ズキズキと痛みが増してしまうと、結局は神経を取ることになってしまう場合もあります。
削れば削るだけ歯や神経はダメージを受け、歯の寿命が短くなってしまう可能性があります。
そこで、痛みをできる限り抑え、削らずに治療する方法「ドッグスベストセメント」について解説します。
「虫歯治療=歯を削る」だけではありません!
虫歯菌は感染症の一種で、感染症の治療といえばお薬で治すことが一般的ですね。虫歯も薬で治せる、それが新しい虫歯治療「ドックスベストセメント」です。
ドッグスベストセメントはアメリカ合衆国のCooley & Cooley社から発売されている銅の殺菌力を利用したセメントで、従来の治療法だと神経を取るくらいの大きな虫歯にも利用できるため、神経を取らずに残すことができると期待されている治療法です。
19世紀後半に開発され一度使用されなくなりましたが、1990年に研究が始まり2002年に製品化されました。日本に紹介されてからは10年以上経ちました。
主成分は銅やリン酸、亜鉛などの天然ミネラルで、元々人体にある物質のためアレルギーや拒否反応が出づらく、お子様や妊娠中の方にも使用できる治療法です。
また、虫歯菌を殺菌する成分を半永久的に出し続けるといわれています。
ドックスベストセメントの治療法
当院での治療法は
- 虫歯を強力な殺菌力のある次亜塩素酸水で消毒する
- 一旦、殺菌するお薬(3Mix)を詰める。3Mixとは3種類の抗生物質を混ぜたものです。
- 症状が消えたことを確認できたらドッグスベストセメントを詰め、特殊コーティングしてからハイブリッドを詰めたりセラミックを被せる
この3工程で虫歯治療は完了です。この治療の流れは当院でのやり方になりますが、どの医院でも3工程ほどで治療は完了します。
ドッグスベストセメントのメリット
上記で解説した治療工程からも分かるように、ドックスベストセメントの最大のメリットは歯を削らないことです。
また、痛みをできる限り抑えるので、麻酔をせずに治療ができます。
セメントの殺菌成分の効果で虫歯の再発を抑制することができ、ミネラルの作用により歯の石灰化が徐々に促され、虫歯になった部分が修復していくともいわれています。
お薬の力で虫歯治療をするので、歯の神経を取ることもなく変色も起こりにくいです。
その他のメリットとしては、治療工程が少ないので来院回数も少なく済みます。
とくに歯を削らないメリットはとても大きく、「歯を削らない=神経を残せる」ということなので歯が長持ちします。
歯の神経を取ってしまうと、本来より歯の寿命は約10年程短くなるといわれています。
神経があると血液を介して栄養が歯に行きわたりますが、神経がないと枯れ木のような状態になり栄養が行きわたらなくなります。
そうすると衝撃により歯が欠けたり割れやすく、再度虫歯になっても痛みを感じないので、気づいたら手遅れなほど大きい虫歯になっていたりします。
また、割れ方によっては抜歯以外の治療法がないということもあります。
そのため、歯を削らないドックスベストセメントであれば虫歯になった歯であっても神経を残せる可能性が高く、歯の寿命をなるべく縮めずに治療することができるのです。
ドッグスベストセメントのデメリット
ドッグスベストセメントのデメリットは、保険適用外の治療になるので費用がかかります。
また、以前神経の治療をしていて神経が無い歯には適用していない、ズキズキと痛みが出ている歯もドックスベストセメントを詰めることができない場合もあります。
他にも、前歯などの見えやすい部分が虫歯によって黒く変色してしまった場合、歯をほとんど削らない反面、変色部分が残るため、見た目を気にされる方にはおすすめできません。
まとめ
いかがでしたか?今回は削らない虫歯治療「ドックスベストセメント」を解説しました。
ドックスベストセメントを入れた歯は半永久的に殺菌作用が続くといわれています。
ただ、詰めたところにある虫歯への殺菌作用は半永久的にありますが、虫歯にならない歯になったという訳ではありません。
ドックスベストセメントを詰めても歯磨きを怠ると、違う箇所から虫歯になってしまうことがあります。
正しい歯磨き習慣を身に付け、半年に一度は定期検診を受けるなど、お口の中を虫歯にならない環境にすることが大切です。