インプラントの手術後、鼻から頬にかけて感覚異常があるのですが……
西早稲田の歯医者さん、西早稲田駅前歯科・小児歯科・矯正歯科です。
今回のテーマは「インプラントと感覚異常との関連性」です。
インプラントの手術後、鼻から頬にかけての感覚異常を訴える患者さんがいます。
鼻や頬などインプラントの手術とは一見無関係に思えるものの、実はそうでもないのです。
インプラントの手術後は細菌感染が脅威になりますが、その例となるのがこの症状です。
では実際になぜ細菌感染によって鼻から頬にかけての感覚異常に繋がるのか、その原因を説明します。
1. 上顎洞炎
テーマどおり「鼻から頬にかけての感覚異常」という点から判断すると、可能性が高いのは上顎洞炎です。
これは蓄膿や蓄膿症などと同じですが、症状を引き起こす要因に違いがあります。
一般的な蓄膿や蓄膿症は風邪などによる鼻の粘膜の炎症が元で引き起こされます。
しかし、インプラントの手術後の細菌感染によって引き起こされることもあり、
これはインプラントの先端と上顎洞が接近しているからです。細菌感染ということで虫歯が原因のこともあり、
その点では上顎洞炎はインプラントだけでなく天然の歯でも起こり得る病気です。
また、こうしたインプラントや虫歯などの細菌感染から起こる上顎洞炎を、正確には歯性上顎洞炎と呼びます。
2. 歯性上顎洞炎の症状
ここでは鼻から頬にかけての感覚異常がテーマになっているものの、歯性上顎洞炎の症状は他にもあります。
上顎洞の周囲の骨は頭の骨まで繋がっているため、歯性上顎洞炎で膿みが溜まることで頭痛を起こします。
また、上顎洞は目の下にまで広がっているため、鼻や頬だけでなく目の奥にも違和感があるようになります。
さらに歯性上顎洞炎で膿みが溜まることで鼻呼吸する道をふさいでしまうため、鼻づまりにもなるでしょう。
他にも歯の根元が痛くなることがありますし、噛んだ時にも痛みを感じるようになるのです。
膿みが溜まること自体が口臭にも繋がりますし、インプラントの手術後にこれらの自覚症状があった場合は、
歯性上顎洞炎の可能性を疑って歯科医院で診察を受けてください。
3. 1回法によるリスク
インプラントの手術方法は1回法と2回法の2パターンあり、それぞれの数字は手術の回数を示します。
手術して定着期間を置き、再度手術するという一般的な方法は2回法ですが、
最近では1回の手術で終えられる1回法が主流になりつつあります。
しかし、この1回法は今回のテーマのように細菌感染を起こしやすいというリスクがあるのです。
インプラントが細菌感染を起こすことで歯性上顎洞炎に繋がるわけですが、
2回法の場合は手術後にインプラントを完全に歯肉に埋め込むため、細菌感染のリスクがないのです。
一方1回法では埋め込んだインプラントが露出した状態になるため、細菌感染を引き起こしやすいのです。
特に骨移植などを行った場合はそのリスクはさらに高まり、これは1回法のデメリットと言えるでしょう。
4. 治療方法
歯性上顎洞炎の治療は、どの歯が原因で症状を引き起こしているのかを見極めるのが重要になります。
このため診断ではCTなどを使いますし、信頼できる歯科医院で治療をうけることも大切です。
治療自体は針を刺して上顎洞を洗浄し、膿みを洗い流して抗菌薬を投与します。
それと同時に原因となる歯の治療も行うため、インプラントが原因の場合は状態に合わせて対処します。
また、虫歯などが原因の場合は虫歯治療も同時に行うことになります。
ちなみに歯性上顎洞炎の治療はこのように歯科医院で行えるものの、
一般的な鼻の粘膜の炎症による蓄膿や蓄膿症は歯科医院ではなく耳鼻科で治療を行います。
5. 細菌感染の予防方法
インプラントが細菌感染することで歯性上顎洞炎になるということは、
逆に言えば細菌感染を予防すれば、少なくともインプラントが原因での歯性上顎洞炎は起こりません。
そこで、インプラントの細菌感染を予防するための方法をいくつか紹介しておきます。
まず医療器具の滅菌を徹底することです。
これは歯科医院側の問題ですし、その意味では患者さんも歯科医院選びが重要になってきます。
また口の中の清潔維持を徹底することも大切ですし、リスクを考えて2回法を選択するのもいいでしょう。
インプラントの細菌感染は単なる風邪のように簡単には治せないため、最大限の注意が必要です。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、インプラントと感覚異常の関連性についてまとめます。
- 上顎洞炎 :蓄膿や蓄膿症と同じ。インプラントによる細菌感染が原因の場合、歯性上顎洞炎と呼ぶ
- 歯性上顎洞炎の症状 :鼻から頬にかけた違和感だけでなく、頭痛や目の奥の違和感や口臭などもある
- 1回法によるリスク :1回法が主流になりつつあるが、1回法は細菌感染を引き起こしやすいデメリットがある
- 治療方法 :上顎洞を洗浄して膿みを洗い流して抗菌薬を投与する。原因となる歯の見極めが重要
- 細菌感染の予防方法 :滅菌を徹底した信頼できる歯科医院で治療する、2回法を選択するなど
これら5つのことから、インプラントと感覚異常の関連性が分かります。
手術後の鼻から頬にかけた感覚異常の原因は歯性上顎洞炎である可能性が高く、
歯性上顎洞炎はインプラントの細菌感染によって引き起こされます。
この点からも分かるとおり、インプラントの手術において細菌感染は最も警戒すべきことなのです。