Qualitas クオリタス 【第3号】

歯医者さんは痛いのにどうしてやめてくれないんだろうと思いました

ご実家は歯医者さんではないそうですが、歯医者になられた経緯は?

実家はお菓子屋さんです。言ってみれば真逆の仕事ですね(笑)。
高校生の頃、歯列矯正で出会った先生がすごくいい先生で、それで自然に、自分もこんな歯医者さんになれたらいいなあ、と思うようになりました。
もっと小さい頃には、歯医者さんはなんでこんなに痛いんだろう、と思ったこともありましたけど(笑)。
開業は大学を出てから2年9ヵ月の頃です。
その前に何人かの開業医の先生のところで研修をさせていただきましたが、私は非常に恵まれていて、先生がいろいろな情報をくださいました。
こんな治療法を勉強してみたらとか、新しい治療法を病院に見学に行くといいとか、本当によく指導してくださいました。
開業医になって、ドックスベストセメント(Doc’s Best Cement)という最新の治療法を採用したのは、そうした背景があったからです。

「痛くない治療」ということを掲げて開業されたのは、最初からそう考えていらっしゃったんですか?

そうです。私は、患者さんの気持ちを忘れないようにと、学生時代から歯医者さんのイメージをノートに記録してきました。
開業するときにそれを見て、患者さんが何を求めているかを考えて、「無痛」に特化しよう、と決めたんです。
予約される方が多いですが、出張で東京に来るのでその都度診てください、というような地方からの方も多いです。
ラーメン屋さんならいろんな味がありますけれども、歯科医が提供するものはどこも同じようですね。
私のところは、ハッキリと売れるものを掲げて、「無痛」に特化しているのでたくさんの方が来てくださるのだと思います。
歯医者さんが痛いのは私自身も経験があって、こんなに痛いのになんでやめてくれないんだろう、なんて思っていましたね(笑)。
私のところでは、麻酔のときからまったく痛くありません。
それから、患者さんは、削られたとか、抜かれたとか、何かを「された」という言葉をよく使います。
された、というのは、どこか不本意だということです。
された、ではなくて、治療をしてもらった、と言ってくださるように変えていかなければと思っています。/p>

医院の特徴は他にもありますか?

保険外診療が多いことでしょうか。
健康保険は、だれでも最低限の治療を受けられますが、適用される治療法には制限があります。
それで患者さんに保険外治療もできますよ、ということをお伝えしても、高いから結構です、と断られてしまう。
それで、いい治療法があってもみなさんが知らない、ということになるんです。
歯の治療法はたくさんあるのに保険でできるのは、実はそのごく一部です。
たくさんのひとつがドックスベストセメントで、保険適用外の治療法ですが、私がそれを選択しているのは、高い治療効果のほかに、痛くないので患者さんがとても楽だ、ということがあるんです。
ものすごく治療効果が高いけれども、患者さんが大変な思いをして来院回数も多くなる、というような治療法は、私は選びません。
昔のカッパーセメントを改良したものですが、カッパー、つまり銅には非常に高い抗菌性があるので、それを歯の治療に使った。
虫歯菌が金なら抗菌薬で治るはずだ、というところから始まった治療法です。
その抗菌性をさらに生かしたのがドックスベストセメントで、治療法としてもっとも理にかなっていますし、また長い予後を考えても、現時点でいちばんいい方法だと思っています。
まず半永久的な抗菌作用で菌の動きを止める。虫歯の部分は菌にやられてグズグズになっていますから、それをミネラルの力で硬くする。それで治るんです。
昔はそのグズグズの部分を削り取るしかなかったので、それが痛かったんです。

インプラントなどにも、痛くない方法というのがあるんですか?

あります。私のところでは、インプラントを含めて外科的な処置の前に、除菌治療を行います。
外科処置のあとで腫れたり傷んだりするのは、傷口に口内の雑菌が入ることが原因ですから、まず除菌をするんです。
そうすれば術後の痛みや腫れはほとんどありません。
インプラントの翌日に消毒のために来ていただくと、ほとんどの方が、前日にインプラントをしたことを忘れるくらい痛みがなかったとおっしゃいます。
手間はかかりますので、正直に言うと、その分利益を圧迫します。
しかしそうしないと患者さんが痛い思いをされる。保険外診療が多いとはいえ赤字ぎりぎりでやっています(笑)。

虫歯予防ということはどうですか?

定期的に歯医者さんに行く、という人はどれくらいいると思いますか?ある調査ではわずか0.89%です。
それで私は、幼児からの歯科医療が大切だと思うんです。
しかし、なんだかわからないのに連れてこられて、急に押さえつけられたりすれば、歯医者さんにいやなイメージを持つのは当然ですね。
それで大人になってもなんとなく歯医者さんに行きたくない、ということにもなります。
そこで、私は子供たちに、これからどんな道具を使って何をするかを大人以上に説明します。
それからたくさん褒めるんです。
いきなり治療をするのではなくて、少しずつ階段を上らせてあげる。
それで、いつの間にか虫歯治療もできてしまう。
そういうことが私のところでは多いです。

しかも痛くないわけですね。

そうです。私は必ず親御さんにも見ていただきながら治療しますが、子供は正直ですから帰って親に痛くなかったというんでしょうね、それでは私も、という親御さんはけっこう多いんですよ(笑)。
私は子供が好きで、小児治療はやっていて楽しいです。
ビル街ではなくて、緑が多い街で小さな子供からお年寄りまで診られるような、ホームドクターになりたいと思っていましたから、小児治療には力を入れたいと思っています。

最近は、インターネットを見て来院する方が多いと思いますが。

そうですね。ドックスベストセメントは新しい治療法ですので、それを広く知らせる義務はあると思っています。
知らないために、患者さんに後悔してほしくないんです。
しかし、来院する方のほとんどは保険外診療を経験していません。
それで、経験がない方でも、やってみよう、と思っていただけるように、料金設定は低いと思います。
保険外診療の敷居が低いんですね。ドックスベストセメントで1本8,800円ぐらいからできますので、一度経験されると、なぜ今まで歯を削られていたんだろう、と思われるようです。
最近は最初から保険外診療でお願いします、という患者さんが多いですが、それはホームページの力が大きいでしょうね。
また、従来の保険外診療の薦め方には、院長が説き伏せていくようなイメージがありますが、私のところには、私がつくったリーフレットがたくさんあって、それを読んでおいてください、ということにしています。
それで、次に来られたときに患者さんが、これでお願いします、という決まり方がほとんどですね。

最後に、先生の10年後は?

今31歳ですので41歳ですね。もちろん歯医者さんをしていると思いますが、後進を育てていくようなこともしていたいと思います。
東京では今毎日1軒の歯医者さんが廃業していますが、それは、治療技術だけに走りすぎて、経営がわからずに開業してしまう先生が多いからだと思うんです。
私自身は、もともと商売をしている家で育ちましたから、商売がある程度はわかります。
ですから治療技術だけではなくて、経営面も含めたセミナーとか講演会とか、そんなものをやってみたいと思いますね。